少年事件の手続と特色
第1 少年事件の手続きと特色
「子供が逮捕されてしまった,一体これからどうなってしまうのだろうか」
「どういう場合に少年院に行くのだろうか,少年院に行くことになった場合,前科はつくのだろうか」
「少年事件と成年事件は違うというが,一体何が違うのだろうか」
今現在このような不安を持たれている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
少年事件は成人事件と異なる点が多くあります。例えば、少年事件は原則すべての事件が家庭裁判所に送られることになります。また、基本的には公開の裁判ではなく、非公開の審判で処分を下されます。
少年事件と成人事件の違いは?
どのような処分が下されるの?
そもそも少年事件はどのような流れで進んでいくのか、どのような点が成人事件と異なるのか等について解説していきます。
第2 少年事件の流れ
1 捜査機関における捜査
事件を起こした少年は成人事件と同様に警察、検察といった捜査機関から取り調べを受けることになります。その後、成人の場合には検察官が証拠を見たり、被害者との示談などの情状を考慮して、起訴するか不起訴にするかの判断をすることになります。
しかし、少年事件の場合、検察官が判断するのではなく、原則として家庭裁判所に事件が全て送られ、家庭裁判所が判断していくことになります。
2 家庭裁判所送致と観護措置
(1)全件送致主義
捜査機関は犯罪の嫌疑があると判断した場合、及び犯罪の嫌疑が認められない場合であっても家庭裁判所の審判に付すべき事由があると判断した場合には少年事件全てを家庭裁判所に送致する必要があります。
(2)観護措置決定
観護措置とは、家庭裁判所が調査、審判を行うために、少年の心身の安定を考慮しつつ、少年の身体を保護してその安全を図る措置のことをいいます。ほとんど多くの場合、少年鑑別所に送致されることになります。
(3)観護措置の期間
観護措置の期間は、法律に基づき、2週間を超えることができず、特に継続の必要がある場合に1回に限り更新することができるとされています。もっとも実務では観護措置期間は4週間であることが通常です。
(4)審判開始か否か
家庭裁判所に送致された後、裁判官は記録や調査官の調査資料や意見を聞いたうえで、審判をするかどうかを判断します。
(5)試験観察
家庭裁判所は保護処分を決定するため必要があると認められるときは、決定をもって、相当の期間、少年を調査官の観察に付することができるとされており、これを試験観察といいます。
3 処分の種類
(1)不処分決定
不処分決定とは、家庭裁判所が審判の結果、保護処分に付することができず、または保護処分に付する必要がないと認めるときにだされる処分のことをいいます。
(2)保護処分決定
保護処分決定には、保護観察、少年院送致、児童自立支援施設または児童養護施設への送致が存在します。
保護観察とは少年を施設に収容せず、社会の中で生活させながら保護観察所で指導監督を受けさせることで社会内において更生を促していく処分のことをいいます。
少年院送致とは、少年院という閉鎖施設において矯正教育を施される処分のことをいいます。
児童自立支援施設または児童養護施設は少年院に送致される少年と比べて非行性が進んでおらず、むしろ家庭環境等に問題がある少年が送られる施設であり、その中で更生に向けた教育を施されることになります。
(3)逆送
成人と同様に通常の刑事手続きに移行することを一般的に「逆送」といいます。検察官から家庭裁判所に事件が送られるという通常の流れとは逆に、家庭裁判所から検察官に対し事件が送られることになるからです。
調査又は審判の結果、本人が20歳以上であることが判明したときは、本人はもはや少年ではないので、成人と同様の手続きをするべく、逆送されます。
その他に逆送がされる場合については、18歳以上の少年(特定少年)とそれ以外の少年とでは異なっています。
①特定少年ではない少年の場合
特定少年ではない少年は、死刑、懲役又は禁錮に当たる事件について、調査の結果、その罪質及び情状に照らして刑事処分が相当と認められるときは逆送しなければならないとされています。
また、事件当時16歳以上の少年で、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件の場合、原則として逆送しなければなりません。ただし、調査の結果、犯行の動機及び態様、犯行後の状況、少年の性格、年齢、行状及び環境その他の事情を考慮し、刑事処分以外の措置を相当と認めるときは、逆送されないこともあります。
②特定少年の場合
特定少年の場合は、罪の重さに関わらず、調査の結果、その罪質及び情状に照らして刑事処分が相当と認められるときは逆送しなければならないとされています。
また、事件当時16歳以上の少年で、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件の場合の他、事件当時特定少年で、死刑又は無期若しくは短期1年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪の事件の場合も原則として逆送しなければなりません。ただし、調査の結果、犯行の動機、態様及び結果、犯行後の状況、少年の性格、年齢、行状及び環境その他の事情を考慮し、刑事処分以外の措置を相当と認めるときは、逆送されないこともあります。特定少年ではない場合と異なり、犯行の結果も考慮されるため、逆送されずに済む場合はさらに限られる可能性があります。
第3 少年事件の特色
1 全件家裁送致
【第2 2】記載のとおり、捜査機関で捜査を受けた事件は原則全て家庭裁判所に送致されます。
2 要保護性という観点
少年事件において処分を決めるにあたり、非行事実だけではなく、「要保護性」という観点も重要になります。
要保護性とは、以下の3つの要素からなると考えられています。
(1)少年の性格や環境に照らして、将来再び非行に陥る危険性があること
(2)保護処分による矯正教育を施すことによって再非行の危険性を除去できる可能性があること
(3)保護処分による保護が最も有効かつ適切な処遇であること
3 家庭裁判所調査官の存在
家庭裁判所調査官は、少年に関する調査を行い、要保護性の判断の基礎となる資料を収集し、少年の処遇について意見を述べることができます。裁判官は家庭裁判所調査官の意見を重視するので、家庭裁判所調査官の意見が審判に大きな影響を与えることになります。
4 録音録画について
ア 実施対象事件
(ア)裁判員裁判対象事件
(イ)知的障害があり、コミュニケーション能力に問題のある被疑者
(ウ)責任能力の減退・喪失が疑われる被疑者
(エ)検察独自捜査事件
イ 施行対象事件
(ア)公判請求が見込まれる身柄事件であって、事案の内容や証拠関係等に照らし被疑者の供述が立証上重要であるもの、証拠関係や供述状況等に照らし被疑者の取調べ状況をめぐって争いが生じる可能性があるものなど、被疑者の取調べを録音・録画することが必要であると考えられる事件
(イ)公判請求が見込まれる事件であって、被害者・参考人の供述が立証の中核となることが見込まれるなどの個々の事情により、被害者・参考人の取調べを録音・録画することが必要であると考えられる事件
第4 弁護士に依頼するメリット
1 捜査段階
勾留されている場合、家族の方も面会に行くことはできますが、平日の昼のみ、時間は15分程、事件に関することについては話すことはできないなど様々な制限がかされています。他方、弁護士はそのような制限はありません。このことから、弁護士は少年から事件の内容、取り調べ内容を聞くことができ、弁護士からも少年に対し今後の流れや取調べ対応等を伝えることができるので、少しでも少年の不安を和らげることができます。また、身柄解放に向けて裁判所に対して不服申し立てを行うことができ、早期の身柄解放に向けた活動を行うこともできます。
2 家庭裁判所送致段階
まず家庭裁判所に送致される段階で、観護措置決定を回避するために、家庭裁判所に対して意見書を提出することができます。 意見書を提出したにもかかわらず、観護措置決定がなされた場合には、その決定に対して不服申し立てを行うことができ、身柄解放に向けた活動を行うことができます。 また、審判に至る前に審判不開始にすべきであるとの意見書を提出することもできます。
3 審判段階
審判においては、事件の内容や少年の周囲の環境、具体的には家族の支えや学校、雇用先の理解を得ているかといったことから社会内で少年が更生することができる環境が整っていることについて少年自身に聞いたり、両親や関係者の方に聞いたりすることで裁判官に示していくことができます。
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千葉支部 支部長 弁護士
上田 孝明