公衆トイレ内に落書きをして逮捕
事件概要
Aさんは、妻子のある身でしたが、奥様とは別に、Vさんとも交際関係(いわゆる不倫関係)にありました。
ですが、ある時、Vさんから関係の解消を告げられたのです。
Aさんとしては、今後も関係を続けていきたいと考えていましたが、Vさんの決意は固く、関係を継続することはかないませんでした。
Aさんは、一方的に別れを切り出されたことからVさんに対する怒りの気持ちが込み上げてきました。
そして、普段Vさんが使用する我孫子駅や東我孫子駅、天王台駅の男子トイレの個室の壁に、Vさんの携帯電話の電話番号と、Vさんの名前と、Vさんを誹謗中傷し侮辱するような内容をサインペンを使って書きなぐりました。
その後、Aさんは気持ちに落ち着きを取り戻し、普段の生活に戻っていたところ、千葉県我孫子警察署の警察官に「建造物侵入罪」で逮捕され、「侮辱罪」についても捜査されてしまうこととなったのです。
※守秘義務の関係から一部、事実と異なる記載をしています。
事件経過と弁護活動
ご家族からのご依頼を受け、当事務所の弁護士がいち早く千葉県我孫子警察署に留置されているAさんと接見しました。
Aさんは、逮捕されたことで落ち着きを取り戻したのか、接見した弁護士に事案の顛末を冷静にお話しくださいました。
そして、ご家族からの伝言をお伝えしたところ、安心した様子で、今後の対応も依頼したいとのお言葉を頂くことが出来ました。
接見後、ご依頼者であるAさんのご家族に接見時の様子や本件の内容、今後の見通しとともにAさんからのご伝言をお伝えさせて頂くとともに、本件をお任せいただけたことから、すぐに対応を開始しました。
まず、被害者様に対する謝罪と弁済です。
Aさんは、自分でやってしまったことと真摯に向き合い、謝罪の気持ちを自ら手紙として書き貯めていました。
そこで、当事務所の弁護士がAさんの書いた手紙をお預かりし、Vさんと鉄道会社の双方に謝罪をするとともに示談についての交渉を行いました。
Aさんの気持ちが通じたのか、Vさんにも鉄道会社にも示談を受け入れて頂くことが出来ました。
示談交渉と並行し、Aさんの勾留を解くことにも注力しました。
こちらは、Aさんのご家族にも協力いただき、今後のAさんの行動を監督することや、二度と被害者様に接触させないことを約束いただき、書面にして、検察庁や裁判所と交渉を行いました。
そうした活動の結果、Aさんの勾留は直ぐに解かれ、不起訴処分となり、ご家族と元の生活に戻ることが出来ました。
解決のポイント
今回のケースに限らず、ご自身や大切なご家族が、何らかの罪に問われてしまった場合、出来るだけ早く弁護士に相談することをお勧めします。
いち早く弁護士に相談することにより、処分の見通しや今後の手続きの流れについて早い段階で聞くことができ、その後の手続きに落ち着いて対応することができます。
また、取調べの対応方法や供述内容に対するアドバイスを受けることで、誤解を招くような供述を避けることが出来ます。
【Aさんの刑責】
このようなケースの場合、Aさんはどのような罪に問われてしまうのか、あいち刑事事件総合法律事務所千葉支部が解説します。
今回のケースですと、Aさんの犯した罪は「誰が被害者になるのか」によってそれぞれ異なります。
まず第1にVさんを誹謗中傷し、侮辱する内容を不特定多数の人の目に着く場所に書いたということで侮辱罪が浮かぶ方も多いかと思います。
刑法 第232条 侮辱罪
事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、1年以下の懲役若しくは禁錮若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
侮辱罪に対する罰則は当初、拘留又は科料に処すとだけ定められていましたが、令和2年に「厳罰化すべき」という意見から、議論が繰り返され、ついに今年(令和4年7月7日)改正法が施行されました。
侮辱罪について刑が一段階重くなったことで、侮辱罪を理由とした逮捕が行いやすくなったという面もあります。
他人の名誉を傷つける行為を行った人を処罰する法律として、名誉毀損という犯罪もあります。
この二つの罪種の違いとして、侮辱罪は、事実でないことを公表し、他人の社会的地位を貶めること(社会的地位を貶めるのに公表した内容について事実であることを必要としない)で成立し、名誉毀損罪は他人の社会的地位を失墜させるに足りる事実を公表すること(公表した内容が事実である場合)によって成立すると考えられています。
また、ここで言う人とは、生きている人に対してだけでなく、企業や会社なども含まれます。
今回、Aさんは、具体的な事実ではなく抽象的にVさんを誹謗中傷して貶めるような内容を、その内容の真偽は問わず男子トイレの壁に書いたため、侮辱罪が成立すると考えられます。
一例として、「あいつは不倫している!」と書けば名誉毀損に該当する可能性が、「あいつは性にだらしないやつだ」と書けば侮辱罪に該当する可能性があることになります。
次に、建造物侵入罪についてです。
刑法 第130条 建造物侵入罪
正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処す。
建造物侵入罪は他人の管理する場所に正当な理由がなく立ち入ってはならないというルールを犯す罪であり、これに反した場合、建造物侵入罪において捜査されることになります。
本来、男性が男子トイレに入ることは咎められる行為とはなりません。トイレで用を足す、身なりをただす等の行為でであれば、トイレを使用する正当な理由となるからです。
しかしながら、今回Aさんがトイレに立ち寄ったのは、Vさんのことを誹謗中傷し侮辱する内容の落書きをするためでした。
自分たちが管理しているトイレに「落書きをするために使わせてください」という人がいれば、入らないでほしいと思うのが一般的な感覚でしょうし、管理者の合理的な意思といえます。
Aさんの行為は、そのような管理者の意思に反するようなトイレへの立ち入り厚意になるため、建造物侵入罪が成立してしまうのです。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所千葉支部の弁護士は日頃より刑事事件を数多く受任し、扱ってきた実績がございますので、どのような事件でも安心してご相談頂けます。
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