動物虐待で不処分
- 2020年6月5日
- コラム
未成年による動物虐待事件と不処分について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所千葉支部が解説します。
【ケース】
千葉県船橋市に住むXさん(17歳)は、公園に住んでいる野良猫に対して暴力をふるっていました。猫の中には、死亡してしまう猫もいました。
野良猫とはいっても、近所の住民らにとっては、自分の猫のようにかわいがっている人もいたため、猫が暴力によって死亡している死骸をみて、犯人を突き止めようとする動きが活発になりました。
その後も、Xさんは猫らに対する暴力行為を続けていましたが、ある時、猫を守ろうとする団体の人に見つかってしまいました。Xさんは急いで逃げましたが、住所を特定され、後日、千葉県船橋警察署の警察官が自宅を訪ね、取り調べを受けることになりました。
(フィクションです。)
【動物虐待に対する罰則】
動物に対して暴力を振るったり、必要な世話を敢えてしなかったりすることは、動物虐待に当たります。
動物との共生が叫ばれる現在においては、動物虐待も非難されるべき行為であり、法律上罰則が定められていることは意識しておくべきです。
動物虐待に対して適用される法律は、以下の2つが挙げられます。
まず、特にペットや牧畜等に対する虐待について「動物の愛護及び管理に関する法律」(通称:動物愛護法)に違反する可能性があります。
動物愛護法は、ペットや牧畜等として扱われる動物の一部を「愛護動物」と定義し、これをみだりに殺傷したり世話を怠ったりする行為につき罰則を定めています(現行法においては、2年以下の懲役または200万円以下の罰金とされていますが、すでに法律改正がなされており改正法が施行されると、5年以下の懲役または500万円以下の罰金という非常に重い刑となります)。
上記事例のように、野良猫に対して怪我を負わせた場合、動物愛護法違反となる可能性が高いです。
また、他人の所有物である動物に虐待を加えた場合、刑法261条が定める器物損壊等罪(動物傷害罪)に当たる可能性があります(3年以下の懲役または30万円以下の罰金)。
刑法261条には、「他人の物を損壊し、又は傷害した者」と規定されており、
法律上、所有されている動物は「物」として扱われるのが原則なので、他人所有の動物に対する虐待は「他人の物」を傷害する行為ということになります。
動物愛護法違反の罪と器物損壊等罪は、法律の目的を異にすることから両方とも成立しうると考えられています。
もっとも、改正動物愛護法が施行された場合には、懲役刑、罰金刑ともに動物愛護法が上位の関係になるため、動物愛護法による処罰が一般化していくのではないかと考えられます。
【不処分を目指して】
罪を犯した者が20歳未満である場合、その事件は刑事事件ではなく少年事件として扱われるのが原則です。
少年事件においては、刑罰が科されない代わりに、少年の更生と健全な育成を目指して保護処分というものが行われることになります。
保護処分が行われるまでの流れは、①警察の取調べ→②検察官送致→③家庭裁判所送致→④調査→⑤少年審判となるのが一般的です。
場合によっては、逮捕・勾留や観護措置による鑑別所留置などが行われ、身柄が拘束された状態で手続が進められることになります。
少年事件における手続の目的は「少年の更生」であり、更生のために、事実関係を確定させたうえで、少年の心理状態や少年の生活環境等の調査を行い、その結果を踏まえて、「少年の更生」にとってベストな具体的な保護処分の内容を決める少年審判が行われます。
保護処分の内容は様々ですが、重いものだと少年院送致があり、少年院の場合には、少年は自由のない環境で更生を目指していくことになります。
少年院送致という保護処分はもちろん少年の更生を目指すための処分ではありますが、自由がない環境であることから、学校に通うことができませんし、また、他の「悪い少年」と関わることで、かえって少年の更生にとって悪影響を及ぼしてしまうこともあり得ます。
逆に、「不処分」は、保護処分を行わないという決定であるため、少年はその後の生活において何らの制約も課されません。
「不処分」という結果を実現するには、少年本人とその周囲の力だけで少年の更生が可能であることを積極的にアピールする必要があります。
少年事件においては、少年自身ときちんと向き合い、本当に必要な処分は何か、を弁護士から主体的にアピールしていく姿勢が必要です。弊所は少年事件の経験豊富な弁護士が在籍しており、少年にどのような問題があるのか、少年の問題点にどのようにアプローチし、その点をいかにアピールしていくのかきちんと対応していくことができます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、少年事件に強い弁護士が不処分を目指して的確なアドバイスを致します。
もしお子さんが動物虐待をして警察が介入したら、刑事事件・少年事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。