詐欺事件で保釈
- 2020年6月11日
- コラム
詐欺事件と保釈について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します。
【ケース】
会社員のAさんは,ある有名歌手のコンサートチケットを手に入れたことから,インターネットを利用してそのチケットを売ることを考え始めました。
ですが,チケット1枚ではさほど儲からないと思ったことから,そのチケットを売るかのように装う詐欺を行うことにしました。
そして,AさんはSNSやオークションサイトでチケットを売る旨呼びかけ,先に代金を振り込ませておいてチケットの発送を行いませんでした。
しばらくして,千葉県銚子市に住むVさんが被害届を出したことで,Aさんは詐欺罪の疑いで銚子警察署に逮捕されました。
Aさんは,接見に来た弁護士に保釈を依頼したいと伝えました。
(フィクションです。)
【詐欺罪について】
刑法(一部抜粋)
第二百四十六条 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
詐欺罪は,他人を欺いて財産を受け取った場合に成立する可能性のある罪です。
具体的に言うと,①他人を欺く行為(「欺罔行為」と呼ばれます)により,②その他人が錯誤(いわゆる勘違いなど)に陥り,これによって③財産の交付を受けたと言え,なおかつ④①から③の行為について故意がある場合に詐欺罪が成立します。
④の故意とは,簡単に言えば自身の行為が詐欺に当たると理解していることを意味します。
こうした故意があってはじめて犯罪として処罰されるのが原則です。
今回のケースでは,チケットを売る気がないにもかかわらず,Aさんがチケットを売るかのように装ってVさんらに代金を支払わせています。
このような行為は,上記①から④のいずれもが認められ,詐欺罪に当たると考えられます。
これとは別に,チケットを売る気はあったものの,相手方からの入金後に何らかの事情でチケットを渡せなくなった場合,少なくとも詐欺罪には当たらないと考えられます。
この場合には,上記①他人を欺く行為や,④詐欺罪の故意が欠けるためです。
ただし,契約上の義務を果たさなかったとして,民事上の損害賠償責任などを負う可能性はあります。
【保釈とは何か】
テレビなどで「芸能人が○○万円で保釈された」といった内容の報道を耳にすることがあるかと思います。
保釈とは,逮捕・勾留により身体を拘束されている者の身柄を解放するための手続の一つです。
本記事をご覧の方々の中には「芸能人は金の力で簡単に釈放してもらえるからずるい」と思われる方がいらっしゃるかもしれませんが,それは誤解のように思います。
そもそも保釈とは,裁判所に一定額の金銭(保釈保証金)を預けることで,少なくとも裁判の判決が出るまで身柄を解放してもらうという手続です。
第一の注意点として,お金を支払うわけではなく一時的に預けるだけだということが挙げられます。
このようにお金を預ける理由は,保釈中の被告人が逃亡や証拠隠滅などに及んだ際にお金を没収すると警告することで,間接的に被告人の行動を誓約するためです。
こうして被告人の行動を制約するからこそ,逃亡などに及ぶ可能性が低いとして身柄解放が認められるという建前になっています。
もし裁判所に背いて逃亡などに及べば,預けた保釈保証金の一部または全部が返ってこなくなります。
また,第二の注意点として,被告人となった後,すなわち起訴されてからでないとこの手続を利用できないことが挙げられます。
殆どの場合,逮捕されてから起訴されるまで10日~3週間程度を要するので,逮捕後すぐには保釈を利用することがほぼできません。
更に,第三の注意点として,保釈したいという要望が必ず実現するとは限らないことが挙げられます。
保釈は被告人側から請求したうえで裁判所が許可を出すのが通常であり,保釈を認めてもよいかどうかの審査が行われます。
時には,保釈を認めてもらうために被告人の周囲の環境を整えることも必要となるでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では,刑事事件のプロである弁護士が,保釈してほしいというご依頼を真摯にお聞きします。
ご家族などが詐欺罪の疑いで逮捕されたら,刑事事件・少年事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。