あおり運転で強要罪
- 2020年6月15日
- コラム
あおり運転で強要罪が適用される場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所千葉支部が解説します。
~ケース~
千葉県館山市にあるサービスエリア付近まで数キロに渡り、幅寄せなどのあおり運転を繰り返し、後車を無理やり停止させたとして、兵庫県館山警察署はAさんを強要の疑いで逮捕しました。
Aさんは、他でも同様のあおり運転を行っており、既に別の事件で千葉地方検察庁に起訴されています。
(フィクションです。)
あおり運転に適用される罪
あおり運転については、これまで、車間距離不保持などの道路交通法違反や刑法の暴行罪が適用されてきました。
道路交通法違反(高速道路上の車間距離不保持違反、急ブレーキ禁止違反、安全運転義務違反)の法定刑は、3月以下の懲役または5万円以下の罰金で、暴行罪は、懲役2年の懲役もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料です。
このように、これまで適用されてきた罪には、有罪の場合には罰金刑が言い渡される可能性があります。
しかし、悪質なあおり運転については、より重い刑罰を科すことができる強要罪が適用されることもあります。
強要罪
強要罪は、相手方もしくは相手方の親族の生命、身体、自由、名誉もしくは財産に対し、害を加える旨の告知をして脅迫しまたは暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、または権利の行使を妨害する罪です。
◇行為◇
脅迫
本人または親族の生命、身体、自由、名誉または財産に対し害を加えることを本人に告知することをいいます。
害悪の告知は、一般人を畏怖させるに足りる程度のものでなければならず、不快感、気味悪さ、警告にとどまるものは含まれません。
また、一般人を畏怖させるに足りる程度の害悪の告知がなされればよく、現実に相手方が畏怖したことは必要とされません。
暴行
人に対して加えられた有形力の行使であって、必ずしも直接人の身体に加えられる必要はありません。
相手方の身体を直接殴る蹴るなどの暴力行為だけでなく、脅すつもりで相手方に当たらないように石を投げる行為も暴行に該当し得ます。
あおり運転についても、判例は、あおり運転により、相手方に対する交通上の危険につながる場合、当該運転行為は、相手車両の車内にいる者に対する不法な有形力の行使に当たるとしています。(東京高裁昭和50年4月15日判決)
Aさんの幅寄せなどのあおり運転についても、暴行に当たる可能性があるでしょう。
◇結果◇
行為の結果、人に義務のないことを行わせ、または権利の行使を妨害することです。
「義務のないことを行わせ」るというのは、行為者において何ら権利・権能がなく、相手方に何ら義務がないのに、相手方に作為・不作為または忍容を余儀なくさせることをいいます。
「権利の行使を妨害する」とは、相手方が法律上許されている作為・不作為に出ることを妨害することをいいます。
Aさんには、通常の場合、高速道路上で相手の車を停止させる権利もなく、相手も停止する義務はありません。
Aさんのよるあおり運転(=暴行)を受けた相手方が、高速道路上で運転を停止することを余儀なくなせたのであれば、強要罪が成立するものと考えられます。
このような強要行為を行っていないにもかかわらず、捜査機関から強要罪で逮捕され又は捜査された場合には、自己の主張を積極的に裏付ける証拠の収集や、捜査機関の主張が十分な証拠に裏付けられていないことを指摘し、不起訴処分や無罪判決に持ち込むよう弁護活動を行う必要があります。
他方、容疑を認める場合には、弁護人を介して被害者と早期に示談を成立させることにより、不起訴処分で事件を終了させ、前科が付かないよう動くことが重要です。
また、起訴され裁判になった場合でも、示談は有利な事情となりますので、執行猶予付判決となる可能性を高めることができます。
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