パワハラが強要事件に発展
- 2020年7月24日
- コラム
パワハラが強要事件に発展したケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所千葉支部が解説します。
~事例~
Aさんは、千葉県我孫子市で会社Xを経営している経営者です。
Aさんは、その会社Xで働く社員のVさんのことを気に入らないと思っており、Vさんが仕事でミスをすると、「クビにするぞ、土下座してみんなに謝れ」「土下座しなければ減給するぞ」などといって無理矢理土下座させたりしていました。
Aさんは、「自分は経営者だから多少嫌なことをしてもVさんは逆らえないだろう」と考えており、Vさんは、土下座などをすることに対して強い抵抗感を抱いていましたが、Aさんから雇われている立場上、逆らったら解雇されたり言及されたりして不利益を被るのではないかという思いから、Aさんの要求に耐えてきました。
しかしある日、VさんはAさんに謝罪と損害賠償を求めてきました。
Vさん曰く、「Aさんのしていることはパワハラで、犯罪にも当たる。謝罪や損害賠償に応じないのであれば、千葉県我孫子警察署へ行って強要罪で告訴することも辞さないつもりだ」と言ってきました。
これを聞いたAさんは、「もしVさんが千葉県我孫子警察署に行ったら、自分は強要罪の容疑で逮捕されるのだろうか」と不安になり、刑事事件に強い弁護士に相談することにしました。
(※この事例はフィクションです)
パワハラで強要事件に?
パワハラとは、パワーハラスメントの略語であり、主に職場内で社会的立場が強い者がその立場や権力を利用して嫌がらせを行うことを指します。
最近では、通称「パワハラ防止法」(正式名称「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」)が改正・施行されるなど、パワハラという名称やその内容が世間に浸透しています。
このパワハラですが、パワハラをしたからといって「パワハラ罪」になるわけではありません。
「パワハラ罪」という犯罪があるわけではないからです。
しかし、パワハラの内容が刑法などの法律に違反するものであれば、当然犯罪となり、刑事事件になることが考えられます。
強要罪が適用されると
今回のAさんが心配している強要罪は、刑法に定められている犯罪の1つです。
強要罪があることによって、個人の意思決定の自由及び意思実現の自由が守られています。
刑法第223条第1項
生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、3年以下の懲役に処する。
上記のように、強要罪が成立するためには、生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対して害を加える旨を告知しての脅迫や暴行が用いられていることが必要です。
この強要罪のいう「脅迫」は、人を畏怖させるに足りる害悪の告知をいい、上記生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対する害悪の告知に限られるとされています。
一方、強要罪のいう「暴行」は、人や人の体に影響力を与えるのであれば、直接人に加えられるものでなくてもよく、相手方に不当な作為・不作為を強要しうる程度のものとされています。
これらを用いて、人の義務のないことをさせたり権利を行使させなかったりした場合に、強要罪が成立するのです。
上記事例の場合、AさんはVさんを解雇する旨や減給する旨を伝え、土下座を強要しています。
解雇や減給といった処分は、Vさんの財産にかかわる害悪の告知と考えられますし、土下座はVさんに義務のある行為ではありませんから、Aさんに強要罪が成立する可能性があるといえるでしょう。
なお、強要罪には未遂罪の規定も存在するため(刑法第223条第3項)、土下座を強要されたVさんが最終的に土下座をするに至らなかったとしても、Aさんには強要未遂罪が成立する可能性があります。
今回のAさんは、経営者という立場を利用してVさんに土下座を要求するなどの嫌がらせをしていたことから、まさにパワハラにあたる行為をしていたといえます。
先述のように、パワハラというと単なる嫌がらせであるようにとらえられがちですが、今回のAさんのように、パワハラの内容が強要罪のような犯罪になる可能性も十分考えられますから、もしもパワハラが刑事事件化してしまった、パワハラが刑事事件化しそうだという状況になったら、刑事事件に対応可能な弁護士に相談することが望ましいでしょう。
パワハラが刑事事件化しそうになったら
今回のAさんの場合、まだVさんは被害届を出しておらず、刑事事件化する前の段階のようです。
このような状況である場合、刑事事件化する前に示談を締結し、被害届や告訴をしないという約束をしてもらうことで、そもそも刑事事件化することを防ぐという活動が考えられます。
しかし、当事者同士で話し合うにも、お互いがヒートアップしてより溝が深まってしまったり、被害者側が恐怖や被害感情から直接の交渉を避けたりというリスクも予想されますから、こうした状況では専門家であり第三者的立場にある弁護士を介入させることが効果的です。
弁護士であれば、お互いが納得できる解決に向けて提案をしていくことが可能ですし、被害者側からしても、加害者と直接話し合わなくてもよいというメリットが生まれます。
もしもその後刑事事件化してしまったとしても、あらかじめ弁護士ついていればその後の刑事弁護活動も対応していくことができますから、まずは弁護士に相談してみることをおすすめいたします。
刑事事件に強い法律事務所
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所千葉支部では、パワハラから強要事件などの刑事事件に発展したケースについてもご相談・ご依頼を受け付けています。
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