窃盗事件の自首を検討
- 2020年9月12日
- コラム
窃盗事件の自首について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所千葉支部が解説します。
窃盗事件で自首を検討
Aさんは、佐倉市の居酒屋でアルバイトをしています。
先日、アルバイト中に、トイレに席を立った客が椅子の上に財布を置きっ放しにしているのを見つけたAさんは、誰も見ていないことを確認して、この財布を盗みました。
そして盗んだ財布の中から現金(約5万円)だけを抜き取り、アルバイトから帰宅途中の川にカード等の入った財布は捨てたのです。
この客が窃盗の被害届を千葉県佐倉警察署に提出したらしく、事件の数日後にAさんがアルバイトをしている居酒屋にも捜査員が訪ねてきました。
居酒屋の店内に防犯カメラは設置されておらず、Aさんが捜査員から事情聴取を受けた感じでは、まだ警察はAさんが犯人だと割り出せていないようですが、発覚するのも時間の問題だと諦めたAさんは、警察に自首することを考えています。
(フィクションです)
窃盗事件
刑法第235条(窃盗罪)
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
Aさんの行為は窃盗罪に該当するでしょう。
現金を抜いた財布を川に投棄した行為は、器物損壊行為に当たりますが、今回は投棄したのは窃盗によって得た被害品ですので、不可罰的事後行為となって、新たな罪(器物損壊罪)に問われることはないでしょう。
自首
自らの犯罪行為を捜査機関に申告すれば「自首」となることは広く知られていますが、この様な行為の全てが自首として認められるわけではありませんので注意が必要です。
刑法第42条(自首)
罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる。
この条文を読むと、自首すれば刑が減軽されるように思いがちですが、自首したからといって、必ず刑事処分が減軽されるわけではなく、裁判官の裁量により刑が減刑される可能性があるという意味になります。
これを、任意的減刑といいます。
この様な、任意減軽の規定を設けている主な理由は
①犯人の悔い改めによる非難の減少
②犯罪の捜査及び犯人の処罰を容易にして訴訟手続きの円滑な運用に寄与
です。
そもそも自首とは、犯罪事実が捜査機関に発覚する前に、捜査機関に対して自発的に自己の犯罪事実を申告して、訴追を求めた者を意味します。
「自首」と「出頭」は違う
「出頭」とは、犯罪事実や容疑者がすでに発覚している状態で、犯人自ら警察に出向くことをいい、法律的な手続きが存在するわけではありませんし、自首のような減軽措置が定められているわけでもありません。
ただし、出頭することで深く反省していると情状面で考慮されて、刑が軽くなる可能性はありえます。
自首が成立するには
①捜査機関に発覚前の事件を申告すること
自首が成立するのは
・犯罪事実が捜査機関に発覚していない場合
・すでに犯罪事実が発覚していても犯人が割り出されていない場合
です。
②自己の犯罪事実を告げること
捜査機関の自己の処分に委ねることを意味します。
このことから、申告の内容が犯行の一部を殊更に隠すものであったり、自己の責任を否定するものであったりするときは、自首とはいえません。
③自発的に行われること
捜査機関の取調べを受けて自白することは自首にはなりません。
ただし、ある犯罪について取調べをされている際に、捜査機関に発覚していない他の犯罪事実を申告することは自首に当たります。
④捜査機関に対する申告であること
ここでの捜査機関というのは、検察官や司法警察員を意味します。
自首の方法は、口頭でも書面などによる場合でも構いませんし、直ちに捜査機関の支配下に入る状況にある時は、電話による自首も有効であると考えられています。