身に覚えのないお金が口座に振り込まれたら
- 2020年12月21日
- コラム
口座に振り込まれた身に覚えのないお金を勝手に引き下ろした場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所千葉支部が解説します。
口座に振り込まれた身に覚えのないお金を使ってしまった
千葉県佐倉市に住むAさんは、アルバイトのお給料を引き下ろしに銀行に行きました。
銀行でAさんが、自身のキャッシュカードをATM機に挿入し、残高を確認したところ、本来のアルバイト代よりも高額のお金が振込まれていたのです。
Aさんは、誰から振り込まれているのか確認するために通帳記帳をしたところ、アルバイトの給料とは別に、身に覚えのない名義から50万円もの大金がご入金されていることがわかりました。
Aさんは、自分の口座に振り込まれたお金だから引き下ろして使っても問題ないだろうと思い込み、全額を引き下ろして全額使い果たしてしまったのですが、それから1ヶ月ほどして、千葉県佐倉警察署から「あなたの口座にご入金されていた50万円のことで話しが聞きたい。」と警察から電話がかかってきたのです。
Aさんとしては一刻もはやく弁償して事件を解決したいと思っていますが、誰に、どうすればよいのかわからず、両親とともに刑事事件に強い弁護士に相談することにしました。
(この事例はフィクションです。)
銀行口座への誤入金・誤振り込み
誤入金・誤振り込みとは、振込者本人や銀行側の手違いにより、本来振込みの相手方ではない人の預金口座に誤って振込みをすること、あるいは本来振り込むべきではない額を誤って振り込むこと、をいいます。
本当にこんなことが起きるのかと思うのですが、現在は、インターネット上でボタン一つで振込みを行うことができますので、振込先や振込額をよく確認しないまま振り込んでしまう、というケースが見受けられるようです。
誤入金・振り込みされた時の対処
では、銀行から誤入金・振り込みがあった場合、振込みを受けた受取人(Aさん)はどのように対応すればよいのでしょうか?
このことについては、過去の裁判で
銀行にとって、払戻請求を受けた預金が誤った振込みによるものか否かは、直ちにその支払に応ずるか否かを決する上で重要な事柄であるといわなければならない。
これを受取人の立場から見れば、受取人においても、銀行との間で普通預金取引契約に基づき継続的な預金取引を行っている者として、自己の口座に誤った振込みがあることを知った場合には、銀行に上記の措置を講じさせるため、誤った振込みがあった旨を銀行に告知すべき信義則上の義務がある
としています。
つまり、誤入金・振り込みに気づいた場合、まず銀行に、告知する(知らせる)必要があります。
引き下ろして使ってしまうと犯罪に
過去の裁判では、銀行に誤入金・振り込みを知らせずに引き出した行為を
誤った振込みがあることを知った受取人が、その情を秘して預金の払戻しを請求することは、詐欺罪の欺罔行為に当たり、また、誤った振込みの有無に関する錯誤は同罪の錯誤に当たるというべきであるから、錯誤に陥った銀行窓口係員から受取人が預金の払戻しを受けた場合には、詐欺罪が成立する
と判断しています。
この裁判の事件は、直接、窓口で引き出した事案で、騙される人(窓口の人)が存在する事案でしたので、詐欺罪が成立したようですが、Aさんのように、ATM機から引き下ろした場合は、詐欺罪ではなく窃盗罪(刑法235条)が成立する可能性があるでしょう。
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