酩酊状態で女子トイレに侵入した建造物侵入
事件概要
Aさんは千葉駅で同僚との飲み会の際、久しぶりの飲み会であったことからお酒が進み、ついつい飲み過ぎてしまいました。
日付が変わり解散する頃には、呂律が回らず、立っているのがやっとのような状態でした。
そして、駅付近の商業施設の女性トイレ内の個室にて眠ってしまっていたところ、警備員と警察官に声を掛けられ、建造物侵入罪の犯人として逮捕され、千葉中央警察署に身柄を拘束されることになってしまいました。
※守秘義務の関係で一部事実と異なる記載をしています。また、本件は新型コロナウイルスが蔓延する前の話になります。
事件経過と弁護活動
今回の女子トイレのように、「入ってはいけないところに勝手に入ってしまった」Aさんはどのような罪に問われてしまうのでしょうか。
人の管理する場所や建物に入り込んでしまった場合、まず、挙げられるのは「住居侵入罪」です。
刑法第130条前段 住居侵入罪
正当な理由がないのに人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。
個人が生活する住居や居室はプライベート空間であり、その場所で安心して生活をするということは、最大限に保護されるべき個人法益です。
これを侵害することは、たとえ、捜査機関であっても許されるものではなく、承諾を得ずに立ち入る際には裁判所が発付する捜索差押許可状(通称ガサ状)が
必要なほどです。
ですから、一般の方であれば、承諾を得て入る他なく、承諾なく、むやみやたらに他人の住居や居室に入ってしまった場合は処罰されることになってしまいます。
ですが、今回のAさんは、住居や居室ではなく、商業施設のトイレに入ってしまっています。
この場合は、同じ条文が適用されるのですが、「建造物侵入罪」という罪で扱われることになります。
この「建造物侵入罪」とは、正当な理由なく他人の管理する住居以外の建造物や艦船に入り込む行為のことを指します。
また、同様の行為を禁止する法律として「軽犯罪法違反」でも以下のように定められています。
軽犯罪法第1条1項 潜伏の罪
人が住んでおらず、且つ、監守していない邸宅、建物又は船舶内に正当な理由がなくて潜んでいたもの。
軽犯罪法第1条32項 不正立入
入ることを禁じた場所又は他人の田畑に正当な理由がなくて入ったもの。
罰則はいずれも、拘留又は科料に処す。
建造物侵入罪、軽犯罪法違反(潜伏の罪、不正立入)はいずれも、「他人の管理する場所に正当な理由がなく立ち入ってはならないこと」に対する法律であり、これに反した場合、犯した法益侵害の程度により、いずれかの罪において捜査されることになります。
そして、今回のケースでは、商業施設の女性用トイレ内に入っていたことから、建造物侵入罪として逮捕されることになってしまったのです。
ご家族からのご依頼を受け、当事務所の弁護士がいち早く千葉中央警察署に留置されているAさんと接見しました。
Aさんは初犯ということもあり、逮捕されたという事実にひどく動揺し、また、なれない留置施設での生活に疲労困憊と言った様子でありました。
また、事件当時、酩酊状態にあったことから、当時の状況についてもほとんど覚えていないとのことでした。
そこで、まず、当事務所の弁護士は、ご家族からお預かりした伝言をお伝えし、Aさんに安心してもらうとともに、今後の見通し状況についてもご説明させていただきました。
すると、Aさんも何とか当時の状況を思い出そうとしてくださり、信頼関係を築くことが出来ました。
Aさんは家庭があり、仕事でも重要な役目を担う立場にある方でしたので、まずはAさんの身柄を解放することを最優先に活動をしました。
ご依頼者であるご家族の協力も得て資料を作成し、検察庁、と裁判所に対して「早期に釈放するべきである」という申し入れを行いました。
Aさんの生活状況や職場での様子、勾留が続くことによって生じる不利益等を材料に粘り強く交渉を行った結果、逮捕からわずか2日で釈放となり、Aさんは家に帰ることができ、会社にも出社することができるようになりました。
次に、当事務所の弁護士は、Aさんから相手方への謝罪をお伝えしに行きました。
商業施設の女性トイレに男性が侵入していたとなれば、企業としても信用にかかわる問題となってしまうため、相手方からも難色を示されてしまうことがあります。
そのため、いち早く相手方に対し、誠心誠意Aさんの謝罪の気持ちをお伝えして交渉したところ、受け入れて頂き、Aさんに対して重い刑事罰までは求めないという意思表明をしていただくことができました。
結果として、Aさんは不起訴処分となり、ようやく今まで通りの日常を取り戻すことが出来たのです。
解決のポイント
新型コロナウイルスによる様々な制限も緩和され、飲酒する機会も増えてくることと思います。
お酒を飲んでいる時こそ、罪を犯してしまったり、トラブルに巻き込まれてしまったりすることが多くなってしまいます。
今回のケースに限らず、ご自身や大切なご家族が、何らかの罪に問われてしまった場合、出来るだけ早く弁護士に相談することをお勧めします。
いち早く弁護士に相談することにより、処分の見通しや今後の手続きの流れについて早い段階で聞くことができ、その後の手続きに落ち着いて対応することができます。
また、取調べの対応方法や供述内容に対するアドバイスを受けることで、誤解を招くような供述を避けることが出来ます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士は日頃より刑事事件を数多く受任し、扱ってきた実績がございますので、どのような事件でも安心してご相談頂けます。
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