万引きが事後強盗罪になり逮捕①
- 2020年6月19日
- コラム
万引きと逮捕について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所千葉支部が解説します。
【ケース】
Aさん(21歳)は,競馬で負けが続いたことでお金に困っており,やがてその日に食べるものを万引きして手に入れるようになりました。
ある日,Aさんが千葉県千葉市若葉区内のスーパーマーケットで万引きをしたところ,店を出たところで警備員と思しき男性Vさんに声をかけられました。
これに驚いたAさんは,「とにかく逃げなければ」という考えで頭がいっぱいになり,近くにあったカート数台をVさんに押しつけました。
AさんはVさんがひるんだすきに逃走しましたが,後日事後強盗罪の疑いで千葉東警察署に逮捕されました。
そこで,弁護士がAさんの両親の依頼で接見に向かいました。
(フィクションです。)
【万引きに成立する可能性のある罪】
今回のケースにおいて,Aさんは「事後強盗罪」という強盗の一種を疑われています。
多くの方はご存知かと思いますが,万引き,すなわち商業施設などで商品を盗むという行為に及んだ場合,窃盗罪が成立する可能性があります。
刑法(一部抜粋)
第二百三十五条 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
これに対して,強盗罪というのは,暴行または脅迫を手段として相手方の反抗を封じたうえで物を奪い取った場合に成立する可能性のある罪です。
第二百三十六条 暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
今回のケースでは,①万引きをする→②暴行を加える,という流れであって,上記の強盗罪には該当しないと考えられます。
ここで登場するのが事後強盗罪です。
第二百三十八条 窃盗が、財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために、暴行又は脅迫をしたときは、強盗として論ずる。
暴行・脅迫を用いて物を奪い取っても,物を盗んだあとに暴行・脅迫を加えてその物を確保しても,悪質性はいずれも相違ないと考えられます。
そうした価値観から,事後的に暴行・脅迫を加えたものを事後強盗罪とし,「強盗として論ずる」ことになっているのです。
事後強盗罪は「強盗として論ずる」ので,刑罰の内容や他の罪との関係が強盗罪と同様となります。
これにより,事後強盗罪の法定刑は5年以上の有期懲役であり,なおかつ相手方を死傷させた場合は強盗致死傷罪が成立する可能性が出てくることになります。
今回のケースでは,Aさんが商品を万引きしたあと,逃亡を図るべくVさんにカート数台を押しつけるという暴行を加えています。
このような一連の行為は,窃盗犯であるAさんが,逮捕を免れ,あるいは万引きした商品を取り返されるのを防ぐべく,暴行に及んだと評価できます。
そうすると,Aさんには事後強盗罪が成立し,5年以上の有期懲役が科されるおそれがあるでしょう。
さて,今回のケースでは,Aさんが逃亡したあとで逮捕されています。
次回の記事では逮捕について解説します。
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