強要罪と捜査の流れ
- 2020年6月7日
- コラム
Aさんは、友人らと談笑しながら千葉県東金市内を歩いていたところ、前から歩いてきたVさんと肩がぶつかりました。
Aさんが「おっさん気をつけなよ」と言ったところ、Vさんが睨んできたことから、AさんらとVさんは口論になりました。
AさんらはVさんを囲って軽い暴行を加え、スマートフォンで動画を撮りながらVさんに土下座するよう迫りました。
Vさんは言われたとおりに土下座をしましたが、騒ぎを聞いて駆けつけた東金警察署の警察官により、Aさんらは強要罪の疑いで現行犯逮捕されました。
Aさんと接見した弁護士は、今後の事件の流れを説明しました。
(フィクションです。)
【強要罪について】
刑法(一部抜粋)
第二百二十三条 生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、三年以下の懲役に処する。
2 親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者も、前項と同様とする。
3 前二項の罪の未遂は、罰する。
強要罪は、暴行または脅迫を手段として、他人に無理やり何かをやらせたり、逆にやらせなかったりした場合に成立する可能性のある罪です。
相手方の意思決定の自由を妨げるにとどまらず、その意思決定に基づく行為を妨げる点において、脅迫罪より重大な罪と言えます。
一時期ニュースなどで「土下座強要」が話題になりましたが、正にそうした行為が強要罪に当たることになるでしょう。
ここで注意したいのは、強要の内容や相手方の意思によっては、強要罪とは別の罪が成立する余地があることです。
たとえば、強要罪の手段となる暴行により相手方に傷害を負わせた場合、強要罪と併せて傷害罪が成立する可能性があります。
また、強要したのが犯罪であれば、その犯罪の共犯者として責任を問われる可能性があります。
更に、強要したのが自殺であれば、自殺教唆罪や殺人罪が成立する可能性も出てくるのです。
殺人罪については、相手方が自ら死を選択したにもかかわらず自身が殺害したものと扱われることに違和感を覚えるかもしれません。
ですが、実務では実質的に誰が責任を負うかという観点も重視されており、こうした取り扱いが認められています。
【逮捕された場合の事件の流れ】
刑事事件の被疑者として逮捕された場合、捜査はおおむね以下のように進みます。
①逮捕から勾留決定まで
逮捕されると、警察署で弁解の録取などが行われたあと、48時間以内に事件が警察署から検察庁へ送致されます。
検察庁でも同様に弁解の録取などが行われ、検察官が身体拘束を引き続き行うべきだと考えた場合、検察官が被疑者の身柄を受け取ってから24時間以内に勾留請求を行います。
そして、裁判所で勾留質問が行われたあと、裁判官の判断で勾留の決定が下されます。
以上のそれぞれの段階において、勾留の必要がないと判断されればその場で釈放されます。
②勾留決定から起訴まで
勾留決定が下されると、はじめに勾留請求の日から10日間の拘束が行われます。
この間、捜査機関は必要な捜査を行い、検察官が起訴すべきか不起訴にすべきか判断します。
起訴されれば裁判を行うことが決定し、不起訴あるいは処分保留となれば釈放されます。
処分保留となった場合については、身体拘束こそ解けるものの事件自体は続くので注意が必要です。
これらに対して、長期の捜査が必要であるとして勾留延長が行われることがあります。
勾留延長も検察官の請求と裁判官の判断により行われ、最長で10日間延長される可能性があります。
③起訴後
起訴された被疑者は被告人と呼ばれるようになります。
被告人の勾留期間は数か月間(2か月に加えて場合により1か月単位で延長)であるため、身体拘束は非常に長期に及びます。
その期間中に裁判が行われ、最終的に判決が下されて事件は終了となります。
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