略式手続で正式裁判回避
- 2020年6月4日
- コラム
略式手続について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所神戸支部が解説します。
~ケース~
千葉県四街道市で飲食店を営むAさんは、商標法違反の容疑で千葉県四街道警察署に逮捕されました。
逮捕されたことで、店を開けることができず、Aさんの妻は困っています。
Aさんは、自身の行ったことについて反省していますが、一日でも早く釈放され、店を開けることができないかと心配しています。
Aさんの妻は、刑事事件に強い弁護士に接見を依頼しました。
(フィクションです。)
逮捕された後の流れ
罪を犯したとして捜査機関に逮捕されたAさんは、逮捕から48時間以内に釈放される、もしくは、検察官に証拠や関係書類と共に送られます。
後者の手続がとられると、Aさんに関する事件を処理する権限と責任が警察官から検察官に移転します。
この手続を「送致」と呼びます。
Aさんは、警察署から検察庁に移送され、検察庁で担当検察官からの取調べを受けます。
検察官は、Aさんから聴取した内容や送られてきた証拠、関係書類を検討し、Aさんについて勾留請求をするかどうかを決めます。
検察官が勾留請求をしなければAさんは釈放となりますが、検察官が勾留請求をした場合、Aさんは、裁判所に移動し、今度は裁判官と面談をします。
裁判官は、Aさんの供述や、証拠等を検討した上で、Aさんを勾留するか否かを判断します。
裁判官が勾留の決定をした場合、Aさんは、検察官が勾留請求をした日から原則10日間警察署の留置施設に拘束されることになります。
10日では捜査が十分にできないと判断した場合、検察官は勾留延長請求をし、裁判官は、勾留の場合と同様に、勾留を延長すべきかどうかを判断します。
そして、検察官は勾留の満期日(勾留延長した場合には、勾留延長の満期日)に、被疑者を起訴するか否かを決めます。
検察官が公判請求をした場合、正式裁判が開かれることになります。
起訴されると、被疑者は「被告人」と呼ばれるようになります。
そして、多くの場合、起訴後にも勾留されます。
起訴後の勾留を「被告人勾留」または「起訴後勾留」と呼びます。
被告人勾留の目的は、罪証隠滅や逃亡を防ぐという被疑者勾留の目的と同じですが、被告人の公判への出廷を確保するという目的もあります。
被告人勾留も、検察官が請求し、裁判所が許可を出します。
最初に認められる勾留期限は2か月です。
起訴後であれば、保釈制度を利用して釈放される可能性はあります。
しかし、多額の保釈金を納めなければなりません。
そして、正式裁判を開かれると、事件にもよりますが、第1回公判までだいたい1か月かかります。
容疑を認めている比較的軽微な事件であれば、公判期日1回と判決期日1回で終了しますが、それでも判決言い渡しまで2か月弱はかかりますし、判決確定までを最終的な事件終了と考えると、おおむね2~3か月はかかります。
略式手続
先ほどは、検察官が公判請求した場合について説明しましたが、起訴は公判請求だけではありません。
起訴には、「略式起訴」というものもあります。
「略式起訴」というのは、通常の起訴手続を簡略化した手続(「略式手続」といいます。)を求めるものです。
検察官が簡易裁判所への略式請求の申し立てをすることで、公判手続を経ることなく検察官が提出した書類のみにより、100万円以下の罰金または科料を科す裁判(「略式命令」といいます。)を言い渡します。
略式手続に付すことができるのは、次の要件を満たす場合です。
①簡易裁判所管轄の事件であること。
②100万円以下の罰金または科料に相当する事件であること。
③略式起訴について、被疑者の異議がないこと。
◇略式手続のメリット◇
略式手続のメリットは、
・刑罰が罰金で済むこと。
・正式裁判に比べて身体拘束期間が短くなること。
です。
略式命令は、検察官が略式請求を申し立てた当日のうちに、公判が開かれることなく罰金または科料の略式命令がなされます。
身体拘束されている場合は、略式命令謄本の送達と同時に釈放されます。
被疑者にとっては、早期の事件終結、身体拘束からの解放というメリットがありますので、事実関係に争いがない事件において、法定刑に罰金または科料がある罪で、起訴猶予が見込めない場合には、略式手続に付すことがよいことがあります。
◇略式手続のデメリット◇
ただ、略式手続にもデメリットがありますので、その点について慎重に検討した上で、略式手続に付すべきか否かを判断する必要があります。
デメリットとしては、手続が簡易化されていると言えども、有罪判決を受けていることには変わりありませんので、前科が付くことになります。
日常生活を送る上では、前科が大きな障害になることはあまりありませんが、一定の職に就くことや資格をとる際に問題となることもあります。
そのため、略式手続に付すことに同意する前に、一度刑事事件に精通する弁護士に相談するのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
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