銀行口座を譲渡は犯罪 被害者だと思ったら被疑者に・・・
- 2020年11月28日
- コラム
被害者だと思って警察に届け出たら、銀行口座の譲渡事件の被疑者になってしまった事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所千葉支部が解説します。
被害者だと思って警察に届け出たら、銀行口座の譲渡事件の被疑者になってしまった事件
千葉県館山市に住むAさんは、インターネット上で「使っていない口座を高値で買い取ります。」という宣伝文句のサイトを見つけました。
Aさんは、「ちょうど使っていない銀行の口座があるから売ってしまおう。どうせ使っていない口座だし売却したところで問題ないだろう」と思い、サイトの管理人に連絡を取ると、Aさん名義の銀行の口座を売却しました。
しかしいつまでたっても約束のお金は支払われず、詐欺の被害にあったと思ったAさんは、最寄りの千葉県館山警察署に詐欺の被害届を出しに行きました。
そこで担当の警察官から「あなたは被害者ではなく、犯罪収益移転防止法違反の被疑者です。」と言われました。
被害者だと思って警察に届け出て、銀行口座の譲渡事件の被疑者になってしまったAさんは、今後のことが不安になりました。
そこでAさんは、今後の対応も含めて刑事事件に強い弁護士に相談することにしました。
(※実話を基にしたフィクションです。)
口座売却行為は犯罪?
今回のAさんが口座売却行為に至ったように、インターネットやダイレクトメール、SNSなどで「簡単に稼げる」「お小遣い稼ぎができる」などと謳って口座売却行為をもちかけられて口座売却行為をしてしまう方も多いようです。
通帳やキャッシュカードを売ることによる口座売却行為は、あくまで自分のものを売っているだけであるため、一見問題のない行為に見えますが、口座を売却するAさんの行為は、警察官の言う通り「犯罪収益移転防止法違反(正式名称:犯罪による収益の移転防止に関する法律)」という法律に違反する行為です。
犯罪収益移転防止法
犯罪収益移転防止法では、口座売却行為について以下のように定められています。
犯罪収益移転防止法第28条
第1項
他人になりすまして特定事業者(第2条第2項第1号から第15号まで及び第36号に掲げる特定事業者に限る。以下この条において同じ。)との間における預貯金契約(別表第2条第2項第1号から第37号までに掲げる者の項の下欄に規定する預貯金契約をいう。以下この項において同じ。)に係る役務の提供を受けること又はこれを第三者にさせることを目的として、当該預貯金契約に係る預貯金通帳、預貯金の引出用のカード、預貯金の引出し又は振込みに必要な情報その他特定事業者との間における預貯金契約に係る役務の提供を受けるために必要なものとして政令で定めるもの(以下この条において「預貯金通帳等」という。)を譲り受け、その交付を受け、又はその提供を受けた者は、1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
通常の商取引又は金融取引として行われるものであることその他の正当な理由がないのに、有償で、預貯金通帳等を譲り受け、その交付を受け、又はその提供を受けた者も、同様とする。
第2項
相手方に前項前段の目的があることの情を知って、その者に預貯金通帳等を譲り渡し、交付し、又は提供した者も、同項と同様とする。
通常の商取引又は金融取引として行われるものであることその他の正当な理由がないのに、有償で、預貯金通帳等を譲り渡し、交付し、又は提供した者も、同様とする。
第2項前段では、売却した自分の口座を売却先で他人が自分になりすまして使用することを認識しながら口座を売却等した場合について定めています。
自分になりすまして口座を使用するという相手の目的を認識しながら口座売却行為を行えば、この犯罪収益移転防止法第28条第2項前段に違反し、3年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金となるのです。
では、相手の目的を認識していなければ犯罪とならないのかというと、そういうわけではありません。
犯罪収益移転防止法第28条第2項後段では、口座売却の相手の目的を知らなくとも、「通常の商取引又は金融取引として行われるものであることその他の正当な理由がないのに」「有償で」預金通帳等を交付・提供した場合も犯罪収益移転防止法違反となるとされています。
つまり、口座売却先の事情を知らなくても、口座売却をするだけで犯罪収益移転防止法違反となってしまう可能性があるのです。
原則として、銀行で口座を作る際には口座の名義人本人が使用することが規約に入っています。
ですから、今回のAさんのような口座売却行為はその規約を破る行為であり、「正当な理由がない」口座売却行為=犯罪収益移転防止法違反になると判断される可能性が高いでしょう。
銀行口座を他人に譲渡してしまった方は弁護士に相談を
今回のAさんの口座売却事件では、元々持っていた自分の口座を売却するというケースでしたが、売却目的で口座を作成したうえで口座売却行為をした場合には詐欺罪などほかの犯罪が成立する可能性も出てきます。
やろうと思えば簡単にできてしまう口座売却行為ですが、細かな事情によってどの犯罪がどの部分に成立するのか異なってくるため、なかなか自身の容疑について把握することが難しいです。
だからこそ、口座売却事件で逮捕されてしまったら、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所千葉支部の弁護士までご相談ください。
刑事事件専門の弁護士が、細かな不安や疑問まで丁寧に対応いたします。
お問い合わせは0120-631-881までお電話ください。