自転車での交通事故がひき逃げ事件に発展
- 2021年2月13日
- コラム
自転車での交通事故がひき逃げ事件に発展した事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所千葉支部が解説します。
自転車での交通事故がひき逃げ事件に発展
東金市に住むAさん(50代女性)は、自転車で通勤中に、高齢の歩行者Vさんにぶつかり、Vさんは転倒して、足を骨折する怪我をしました。
Aさんは、Vさんが転倒したのを見て怖くなり、そのまま自転車に乗って走り去ってしまいました。
東金警察署がVさんや目撃者への聞き込みなどの捜査を行い、Aさんによる犯行と断定され、後日Aさんは警察署で厳しい取調べを受けたようです。
警察官から「また後日に取調べに呼ぶ」と言われたAさんは、今後の警察対応や、被害者側との示談対応を相談するために、刑事事件に強い弁護士に法律相談に行くことにしました。
(フィクションです)
自転車事故の刑事処罰とは
一般的に、自動車や原付を運転中に事故を起こした場合には、「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」(自動車運転死傷等処罰法)によって、刑事処罰を受けます。
他方で、自転車を運転中に事故を起こした場合には、自転車事故を特別に処罰する法律は無く、刑法の「過失傷害罪」「過失致死罪」「重過失致死傷罪」などの規定により、刑事処罰を受けます。
それでは関係する条文を見てみましょう。
・刑法 209条1項(過失傷害)
「過失により人を傷害した者は、三十万円以下の罰金又は科料に処する。」
・刑法 210条(過失致死)
「過失により人を死亡させた者は、五十万円以下の罰金に処する。」
・刑法 211条(業務上過失致死傷・重過失致死傷)
「業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、五年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。」
まとめると、
①過失が軽い場合
被害者負傷→過失傷害罪
被害者死亡→過失致死罪
②過失が重い場合
被害者負傷→重過失傷害罪
被害者死亡→重過失致死罪
ということになります。
過失の重さによって成立する犯罪が変わり、刑罰も変わってくるわけです。
過失の重さの判断は難しいところですが、たとえば猛スピードで走っていた、傘さし運転やながら運転をしていた、飲酒運転だった、夜間にライトを付けていなかった、前方不注意だったといった事情が重なれば重なるほど、重過失と判断される可能性が高まることになります。
ひき逃げに対する刑事処罰
また、自転車事故を起こした際に、救急車を呼ぶなどの救護や、警察に事故を報告することなく、事故現場を立ち去ったような場合には、道路交通法72条1項にも違反し、さらに重く罰せられる可能性があります。
罰則は、救護義務違反が10年以下の懲役または100万円以下の罰金(117条2項)、警察への報告義務違反が3か月以下の懲役または5万円以下の罰金となっています(119条1項10号)。
示談をして処罰・前科を避ける
刑事処罰や前科を避けたり、処罰を軽くするためには、被害者に謝罪・賠償して示談を締結することが重要です。
特に過失傷害罪は、親告罪と呼ばれる犯罪です。
親告罪とは、被害者が警察に刑事告訴をしなければ、加害者を裁判にかけることができない犯罪です。
つまり、軽い事故であり、被害者の処罰感情も弱いのであれば、穏便に済ますことができるということです。
自転車事故でも示談が成立し、刑事告訴がなされなかったり、既に出された刑事告訴が取り下げられた場合には、刑事処罰を受けることも前科が付くこともないことになります。
過失傷害罪以外は親告罪ではないため、被害者が刑事告訴をしなくても、加害者を裁判にかけて刑事処罰を与えることができます。
ただし、自転車ひき逃げ事件の場合でも、弁護士が仲介して被害者側と示談締結することで、刑事処罰が軽くなったり、不起訴処分となる可能性が高まるなどの効果が期待されます。
不起訴処分とは、検察官が今回は大目に見るということで、加害者を刑事裁判にかけない判断をすることです。
この場合も刑事処罰を受けず、前科も付かずに刑事手続きが終了することになります。
ただし示談は、金額をいくらにしたらよいのか、示談書の文言をどうしたらよいのか、何と言ってお願いしたらよいのかといった疑問点があったり、被害者が加害者と直接連絡を取ることを拒否する場合もあります。
そこでぜひ一度、弁護士にご相談いただければと思います。
交通事件に強い弁護士
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所千葉支部は、刑事事件を専門に扱っている弁護士事務所です。
すでに逮捕されている事件では初回接見サービスを、逮捕されていない事件では無料法律相談をご利用ください。
フリーダイヤル0120-631-881まで、ご連絡をお待ちしております。