覚醒剤の密輸事件 無罪を目指す弁護士
- 2021年1月19日
- コラム
覚醒剤の密輸事件で無罪を目指す活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所千葉支部が解説します。
覚醒剤の密輸に関与して逮捕
千葉市に住む中国国籍のAさんは、知人から「金塊が送られてくるから受け取ってもらえないか」と言われました。
Aさんは金塊の密輸はいけないことではないかと思いつつも、Aさんは知人から多額の報酬を約束されたことから、依頼を引き受けました。
そして、Aさんは国際スピード郵便で荷物を受け取ったところ、警察に覚醒剤取締法違反(営利目的輸入罪)、関税法違反(無許可輸入罪)で逮捕、起訴されてしまいました。
荷物の中身は金塊ではなく覚醒剤(約1.4キロ)だったのです。
Aさんは裁判で、「荷物は金塊だと思っていた」などと一貫して覚醒剤輸入の故意を否認し、無罪判決を目指しています。
(フィクションです。)
※今回の事件は、実話を基に作成しており、実際に同じようなケースで無罪判決が言い渡された刑事裁判があります。
覚醒剤取締法(営利目的輸入の罪)
覚醒剤の営利目的輸入の罪は、覚醒剤取締法41条2項に規定されています。
41条2項
営利の目的で前項の罪を犯した者は、無期若しくは3年以上の懲役に処し、又は情状により無期若しくは3年以上の懲役及び1000万円以下の罰金に処する。
「営利の目的」とは、犯人が自ら財産上の利益を得、又は第三者に得させることを動機、目的とする場合をいいます。
営利目的の存否は、犯人の主観にかかわるものですから、これを裏付ける証拠は犯人の自白しかありません。
そこで、自白がない場合は、覚醒剤の数量、価格、犯行の手口、態様のほか、犯人が犯罪行為に高額の資金を出捐していること、犯人が犯罪行為を近接した時期に同種薬物を販売していた事実があること、小分け道具等の薬物の密売に用いられる器具等を所持していたことなどの間接証拠(情況)を総合的に勘案して判断されるものと思われます。
「前項」とは41条1項のことをいいます。同項は、覚醒剤の輸入、輸出、製造の罪を定めた規定です。
覚醒剤の営利目的輸入罪は無期懲役刑が設けられている大変重たい罪です。
無罪の可能性はあるのか?
刑事訴訟法336条は
①被告事件が罪とならないとき
②被告事件について犯罪の証明がないとき
に無罪判決を言い渡す、としています。
そして、覚醒剤取締法違反(営利目的輸入罪)において証明すべき事項は
〇覚醒剤を輸入したこと(客観的事実)
〇輸入したものが覚醒剤であると認識していたこと(主観的事実=故意)
の2点です。
この点、今回の事件では客観的事実については争うのが困難ですが、故意については争う価値があります。
実際に同じような事件で無罪判決が言い渡された刑事裁判で裁判官は
被告人に覚醒剤を含む違法薬物の認識があったとまでは認められない
とし、故意を否定して無罪判決が言い渡されたようです。
関税法違反は有罪
金塊の無許可輸入罪は、関税法111条1項1号に規定されています。
第111条 次の各号のいずれかに該当する者は、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 第67条(輸出又は輸入の許可)(第7条において準用する場合を含む。次号及び次項において同じ。)の許可を受けるべき貨物について当該許可を受けないで当該貨物を輸出(本邦から外国に向けて行う外国貨物(仮に陸揚げされた貨物を除く。)の積戻しを含む。次号及び次項において同じ。)し、又は輸入した者
また、覚醒剤などの禁制品輸入罪も関税法に規定されています(罰則:10年以下の懲役若しくは3000万円以下の罰金、又は併科)。
Aさんは覚醒剤を金塊と誤信して輸入したわけですが、いずれも「輸入してはならない」、という規範に直面している状況は同様です。
よって、この場合、輸入罪の故意に欠けることはなく、Aさんは無許可輸入罪の範囲で処罰されることになります。
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