強制性交等罪 被害者の同意が争点に
- 2021年1月21日
- コラム
強制性交等罪と被害者の同意について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所千葉支部が解説します。
強制性交等罪で逮捕
千葉県市原市に住む会社員のAさん(28歳)は、知人女性Vさん(29歳)の自宅においてVさんに対して無理やり性交を行った容疑で、強制性交等罪で警察に逮捕されてしまいました。
Aさんは逮捕直後の弁解録取で警察官に対し「Vさんと性交したことは認めるが、Vさんから同意を得ていた。」「逮捕されたことに納得がいかない。」と話しています。
また、Aさんは接見に来た弁護士にも同趣旨のことを話したため、Aさんのご家族から依頼を受けた私選弁護人は不起訴処分獲得に向けて弁護活動を始めました。
(フィクションです。)
強制性交等罪の成立要件
強制性交等罪は刑法177条に規定されています。
刑法第177条
13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という)をした者は、強制性交等の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。13歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。
まず、強制性交等罪は「暴行」、「脅迫」を手段とする犯罪です。
相手方を殴る、蹴る、羽交い絞めにする、押し倒すなどが「暴行」の典型ですが、「暴行」の程度は、相手方の反抗(抵抗)を著しく困難にさせる程度のものが必要とされています。「脅迫」についても同様です。
なお、相手方が13歳未満の場合は「暴行」、「脅迫」の手段は不要です。つまり、下でご説明する相手方を13歳未満の者と認識しつつ「性行等」を行えば、強制性交等罪に問われます。
次に、「性行等」についてですが、強制性交等罪の場合、単なる「性行=男性が加害者の場合は自己の陰茎を女性の膣内に挿入する行為、女性が加害者の場合はその反対」のみならず、肛門性行、口腔性行も含まれますから注意が必要です。
法定刑は5年以上の有期懲役です。
以上からすると、相手方が13歳以上の場合は
「暴行又は脅迫」と「性交等」
が必要ですし、強制性交等罪は相手方の性的自由を保護する犯罪で故意犯ですから
①被害者の同意がないこと
②加害者に暴行又は脅迫、性交等、相手方の同意がないことについて認識していること
が必要です。
被害者の同意について
被害者の同意とは、法益の帰属者たる被害者が、自己の法益(身体・生命の安全)を放棄し、その侵害に承諾又は同意を与えることをいいます。
かつては、この被害者の承諾によって、守るべき法益(保護法益)がなくなったことを根拠に、被疑者の行為の違法性がなくなり(違法性が阻却され)不可罰となる、と考えられていました。
しかし近年は、その「守るべき法益がなくなったこと」に加え、被疑者の行為の社会的相当性も必要とする、という考え方が主流です。
以上の考え方から、被害者の同意があったというためには、
〇同意自体が有効なものであること
〇同意が内心にとどまらず、外部に表明されていること
〇同意が行為時に存在すること
〇同意に基づいてなす行為が、その目的、動機、方法、態度、程度等において国家・社会の倫理規範に違反せず、社会的相当性を有すること
という要件が必要です。仮にこれらの要件を満たさない場合は、「被害者の同意はない」と判断されてしまう可能性が非常に高くなります。
同意がないことを認識しているかどうかが問題
では、仮に被害者の同意はない、とされた場合、直ちに強制性交等罪が成立するかといえばそうではありません。
さらに、被疑者が、被害者の同意がないことについて認識していること、が必要です。
つまり、加害者が被害者の同意がないことについて誤信していた場合(同意があると思っていた場合)は強制性交等罪が成立しない可能性があります。
強制性交等罪をはじめとする性犯罪ではこの点が争われることが多いです。
ただ、加害者が誤信していたかどうかは、
〇性交等に至るまでの経緯
〇性交等の際の言動
〇性交等後の経緯
などを総合的に勘案して決せられます。
強制性交等罪に強い弁護士
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