店外で店員の腕に噛み付いた万引き犯を事後強盗罪の疑いで逮捕〜柏市内で起きた万引き事件〜
- 2023年9月17日
- その他の刑法犯事件
今回は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所千葉支部が、千葉県柏市内で起きた万引き事件をもとに、事後強盗罪が成立する要件や刑罰について解説します。
【事例】
柏署は11日、事後強盗罪の疑いで自称柏市松ケ崎、無職の男A(50)を現行犯逮捕したと発表した。
逮捕容疑は10日午後6時20分ごろ、同市内のスーパーマーケットで、乳酸菌飲料1点(販売価格279円)を万引したのを見つかり、店外で男性店員V(28)ともみ合いになって左腕にかみついた疑い。
同署によると、別の男性店員(31)が取り押さえた。
「万引したことは間違いないが、店員をかんでいない」と容疑を一部否認している。
(※9/14(木)に『Yahoo! JAPANニュース』で配信された「万引見つかり店員にかみつく 柏市のスーパーで事後強盗疑い 50歳男逮捕」記事の一部を変更して引用しています。)
【事後強盗罪とは】
今回の事例では、Aは事後強盗罪で逮捕されています。
Aは万引きをしているので、窃盗罪で逮捕されるのではないかと思った方もいるのではないでしょうか。
そもそも、万引きとは、レジを通さずに商品を店外を持ち出す行為を指し、基本的に窃盗罪が適用される犯罪行為です。
ただ、万引き後の行為によっては、事後強盗罪が成立することがあります。
事後強盗罪については、刑法第238条で以下のように規定されています。
・刑法第238条(事後強盗)
窃盗が、財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために、暴行又は脅迫をしたときは、強盗として論ずる。
条文にも記載されているように、事後強盗罪の主体は「窃盗犯」です。
なので、窃盗行為に着手していなければ、事後強盗罪は成立しません。
また、事後強盗罪は、暴行や脅迫を加える目的が以下の3つに該当している必要があります。
①盗んだ財物を取り返されることを防ぐため
②逮捕を免れるため
③罪跡を隠滅するため
以上3つの目的を遂行するために、暴行や脅迫を加えた場合に事後強盗罪は成立します。
暴行や脅迫の程度については、通常の強盗罪(刑法第236条)と同様の「相手の反抗を抑圧するに足りる程度」とされています。
今回の事例では、Aは万引きしたことがVに見つかり、Vと揉み合いになったさいにVの左腕に噛み付いています。
この行為が、Aが万引きした商品をVに取り返されることを防ぐためや、Vから逮捕されることを防ぐためなどであった場合、Aには事後強盗罪が成立することになります。
ただ、暴行と脅迫の程度については、具体的状況を基に社会通念に照らして判断されていることもあり、過去の判例では、噛み付いた行為が事後強盗罪における暴行や脅迫の程度として認められたかについては、結論が分かれています。
【事後強盗罪の刑罰】
事後強盗罪が成立した際の処罰内容については、事後強盗罪が規定されている刑法第238条には詳細が記載されていません。
ただ、条文には「〜ときは、強盗として論ずる。」と記載されています。
「強盗として論ずる」とは、事後強盗罪を通常の強盗罪と同じように扱うということを意味しています。
通常の強盗罪については、刑法第236条で以下のように規定されています。
刑法第236条(強盗)
暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、5年以上の有期懲役に書する。
通常の強盗罪の処罰内容は5年以上の有期懲役刑なので、事後強盗罪も同様の内容で処罰されるということになります。
有期懲役は、原則として20年を上限とした期間で指定されるため、事後強盗罪が成立すると、5年以上20年以下の懲役刑で処罰される可能性があります。
【事後強盗罪で逮捕されたら弁護士へ】
事後強盗罪による刑事事件を起こすと、逮捕される可能性もあります。
逮捕されると、その後最大23日間身柄が拘束されるおそれがあり、長期間の身柄拘束は、会社や家族にも影響が及ぶかもしれません。
また、事後強盗罪の処罰規定には罰金刑がありません。
なので、事後強盗罪で検察官が起訴する場合は、裁判にかけられる公判請求がなされます。
裁判にかけられると、無罪判決が出ない限り懲役刑が言い渡され、執行猶予判決が下されたとしても前科がつくことになります。
前科がつくことで今後の人生にも影響が及ぶ可能性もあるため、起訴を免れる不起訴処分を獲得することが重要になります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、様々な刑事事件で刑事弁護活動を担当して不起訴処分を獲得した実績を持つ、刑事事件・少年事件に特化した専門の法律事務所です。
ご自身で事後強盗罪による刑事事件を起こしてしまった方やご家族が事後強盗罪で逮捕されてしまった方で、弁護活動の詳細を知りたい方は、まずは24時間365日受付中の弊所フリーダイヤル(0120−631−881)までご連絡ください。