庭に入っただけでも住居侵入罪に?
- 2020年5月23日
- コラム
庭に入っただけでも住居侵入罪になるのかどうかということについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所千葉支部が解説します。
〜事例〜
Aさんは、千葉県船橋市に住んでいる会社員です。
Aさんは、近所にあるVさん宅が庭付きの大きい一軒家であることから、Vさんの家にはお金や価値の高い物があるのではないかと考えていました。
そこでAさんは、Vさんが外出する機会を狙って、Vさんの家に忍び込んでお金や物を盗むことを思いつきました。
そしてAさんは、Vさんの留守を狙ってVさん宅に忍び込むために、庭の周りにあった柵を超えてVさん宅の庭に入りました。
しかしそこで防犯システムが作動し、警備員が駆けつけたことで、Aさんは身柄を拘束され、千葉県船橋警察署に住居侵入罪の容疑で逮捕されることになりました。
Aさんは、庭に入っただけでも住居侵入罪になるのかと不思議に思い、家族の依頼で接見に訪れた弁護士に相談してみることにしました。
(※この事例はフィクションです。)
・庭に入っても住居侵入罪になる?
今回のAさんの逮捕容疑である住居侵入罪は、刑法第130条に規定されています。
刑法第130条
正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。
刑法第130条では、「人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船」への正当な理由のない侵入をした者について処罰する旨を定めています。
住居侵入罪、邸宅侵入罪、建造物侵入罪、艦船侵入罪は全てこの刑法第130条によって成立する犯罪であり、侵入した場所によって成立する犯罪名が異なるという形になっているのです(なお、これらの場所から要求を受けたにもかかわらず退去しなかった場合に成立する犯罪は「不退去罪」と呼ばれます。)。
また、住居侵入罪には未遂罪も規定されているため(刑法第132条)、住居侵入罪を実行に移したが最後まで遂げなかったという場合には住居侵入未遂罪になります。
さて、その中で今回のAさんの逮捕容疑とされているのは住居侵入罪です。
住居侵入罪のイメージとしては、人の家の中に勝手に入った、というイメージが強い方も多いでしょう。
しかし、今回のAさんはあくまで庭に立ち入っただけであり、Vさんの家に侵入する前に逮捕されているようです。
このような場合でも、住居侵入罪となってしまうのでしょうか。
そもそも、住居侵入罪の「住居」は人が起臥寝食のために日常的に使用する場所を指すと言われています。
簡単に言えば、人の生活の拠点となる場所が住居侵入罪の「住居」であると言えるでしょう。
ですから、住居侵入罪の「住居」と皆さんが想像される「住居」に大きな差はないでしょう。
しかし、今回のAさんが立ち入った庭はいかがでしょうか。
庭は屋外にある物であり、「住居」であると言われると違和感を持つ方もいらっしゃるかもしれません。
ですが、実は庭であっても住居侵入罪の「住居」として判断される可能性はあります。
過去の判例では、建造物に付属している囲繞地(いにょうち)も「住居」の一部とされているのです。
囲繞地とは、垣根・塀・門のような建物の周囲をかこむ土地の境界を画する設備が施され、建物利用に供されることが明示されている土地のこと(最判昭和51.3.4)を指します。
今回のAさんが立ち入ったVさんの庭は、Aさんが柵を超えて立ち入っていることから、「建物の周囲をかこむ土地の境界を画する設備が施され、建物利用に供されることが明示されている」状態であったと考えられます。
この場合、庭であっても住居侵入罪の「住居」であると判断され、たとえ家の中に入っていない状態であっても住居侵入未遂罪となるのではなく、住居侵入罪が成立すると考えられるのです。
刑事事件では、一般の方がイメージされる言葉とずれた専門的な解釈が必要となることもあります。
だからこそ、刑事事件の専門知識のある弁護士に相談することで、見通しや可能な弁護活動について適切に把握することができるのです。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所千葉支部では、初回接見サービスや初回無料法律相談に、刑事事件専門の弁護士が対応しています。
住居侵入事件をはじめとする千葉県の刑事事件にお困りの際は、遠慮なくご相談ください。