年齢切迫事件で逆送回避
- 2020年7月29日
- コラム
年齢切迫事件で逆送回避を目指す活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所千葉支部が解説します。
~ケース~
鴨川警察署に、過失運転致傷事件の容疑者として逮捕された大学生のAくん(19歳)は、1か月後に20歳の誕生日を迎えます。
Aくんの両親は、今後の手続や対応について心配になり、少年事件に強い弁護士に相談することにしました。
(フィクションです。)
年齢切迫事件
家庭裁判所は、非行があるとされる少年について、非行事実の有無を確定し、非行がある少年に対して、少年の性格や少年が置かれている環境の問題点に応じて、保護処分その他の処分を選択します。
この手続を「少年審判」といいます。
審判の対象となる少年は、①審判の時に20歳未満の、②非行のある少年です。
そのため、家庭裁判所は、調査または審判の結果、少年本人が20歳以上であることが判明したときは、検察官送致の決定をしなければなりません。
「検察官送致」は、家庭裁判所が行う終局決定の1つです。
家庭裁判所は、(1)調査あるいは審判の結果、少年が20歳以上であることが判明したとき、及び、(2)死刑、懲役または禁錮に当たる罪の事件について、調査の結果、その罪質および情状に照らして刑事処分相当と認めるときは、家庭裁判所は事件を検察官に送致する決定をしなければなりません。
この終局決定を「検察官送致」決定といい、「逆送」と呼ばれます。
(1)年齢超過を理由とする逆送
審判時に少年が20歳以上に達している場合、少年法の適用対象ではなくなるため、家庭裁判所は審判をすることも、保護処分をすることもできなくなります。
そのため、このような場合には、家庭裁判所は検察官送致の決定をしなければなりません。
(2)刑事処分相当を理由とする逆送
家庭裁判所は、「死刑、懲役又は禁固に当たる罪」を犯した少年について、「その罪質及び情状に照らして刑事処分を相当と認めるとき」は、検察官送致することができます。
また、行為時16歳以上の少年で、「故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪」に当たる事件の場合には、検察官送致の決定をしなければなりません。
ただし、そのような原則検察官送致となる事件であっても、「犯行の動機及び態様、犯行後の情況、少年の性格、年齢、行状及び環境その他の事情を考慮し、刑事処分以外の措置を相当と認めるとき」は検察官送致以外の処分をすることができます。
家庭裁判所送致時に少年の誕生日が迫っている場合を「年齢切迫」といいます。
少年が審判前に20歳に達すれば、少年は成人として刑事手続にのせられることになり、家庭裁判所は年齢超過として事件を検察官に送致しなければなりません。
家庭裁判所送致後、少年が20歳に達する日が迫っており、実質的に調査を行う時間がない場合や、年齢に加えて、事件の内容などから起訴が相当であると判断された場合などは、成人に達する前に、刑事処分相当として逆送されることもあります。
切迫事件で逆送を回避するために
検察官送致となれば、刑事手続に移行し、起訴された場合には公判審理を経て判決により刑罰が科される可能性があります。
判決までの間、保釈制度を利用して釈放されることはありますが、拘置所に勾留されることも多く、長期間に及ぶ身体拘束を強いられる場合もあります。
また、公判は公開審理であるため、少年のプライバシーが侵害されるおそれもあります。
公判の結果、少年に実刑が科された場合、前科が付く上、少年は少年刑務所に収容されることになります。
少年刑務所は、刑罰を執行する行刑施設であり、矯正教育施設である少年院とは目的が異なるため、少年刑務所で行われる教育的処遇は不十分だと言われています。
このようなデメリットがあるため、家庭裁判所送致日から成人に達するまでの日数を考慮し、家庭裁判所送致後、早急に、少年が成人に達する前に審判期日を入れるよう裁判所に働きかける必要があります。
他方、保護処分であれば、少年院送致のような収容を伴う重い処分になる可能性が高いが、逆送となり刑事手続に付されることになれば、罰金刑や執行猶予が見込まれるケースもあります。
このような場合、一見、逆送されたほうが早期に事件が終了し得る可能性が高いように思えますが、逆送が少年の真の更生に資する処分となるかを慎重に検討する必要があります。
お子様が事件を起こし、年齢切迫で逆送が見込まれるのであれば、まずは刑事事件・少年事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
刑事事件・少年事件に精通する弁護士が、ご相談に対応したします。
無料法律相談・初回接見サービスに関するお問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881までお電話ください。