著作権法違反・商標法違反
知的財産権を保護する法律
日本における知的財産権とは、大まかにいうと特許権、意匠権、商標権、実用新案権、著作権などが挙げられ、それぞれ知的な創作活動によって創り出されたものに発生したり付与されたりする権利です。
これらの権利はそれぞれ特許法や意匠法、商標法や著作権法などによって保護されており、これらの権利を侵害する行為をした場合、罰則を与えられることになります。
知的財産法上の犯罪は、高額な罰金や実刑判決を受ける可能性があるので、自分の行為が上記の法律に違反しないかしっかりと確認する必要があります。
なお、特許や商標については、以下のサイトで確認することができます。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/(特許情報プラットフォーム(J-PlatPat))
著作権
著作権は、著作権法によって保護されている権利です。何らかの著作物を創り出した者に与えられる権利であり、人格的な権利としての著作者人格権と財産的な権利としての著作権があります。
著作権とは
「著作物」とは、「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」をいいます(著作権法第2条第1項第1号)。
著作権の範囲は、小説や論文などから、踊りの振り付け、絵画やアニメなどの原画、図面、図表、映画、写真からコンピュータプログラムにまで幅広く及びます(著作権法第10条)。なお、この条文に列挙されているものは例であるため、これらに当たらなくても著作物に当たる場合があります。
そして、著作物を創作する者である著作者は、
①著作者人格権
②著作権
を持つことになります(著作権法第17条第1項)。
著作権の特徴的なところは、「著作物の創作の時に始まる」ため、著作物を創作した時点で発生するところにあります(著作権法第51条第1項)。これは、登録などの手続が必要な特許権や商標権とは異なる部分になります。著作権は、申請や登録がなくても著作物ができた時点で発生し、基本的には著作者の死後70年が経過するまで存続します(著作権法第51条第2項)。
①著作者人格権には、
⑴ 公表権(著作権法第18条)、
⑵ 氏名表示権(著作権法第19条)、
⑶ 同一性保持権(著作権法第20条)があります。
著作者人格権は、「著作者の一身に専属し、譲渡することができない」とされており、著作者から他の誰かに公表権や氏名表示権を譲り渡すことはできません(著作権法第59条)。
②著作権には、
⑴ 複製権(著作権法第21条)、
⑵ 上演権・演奏権(著作権法第22条)、
⑶ 上映権(著作権法第22条の2)、
⑷ 公衆送信権・公の伝達権(著作権法第23条)、
⑸ 口述権(著作権法第24条)、
⑹ 展示権(著作権法第25条)、
⑺ 頒布権(著作権法第26条)、
⑻ 譲渡権(著作権法第26条の2)、
⑼ 貸与権(著作権法第26条の3)、
⑽ 翻訳権・翻案権(著作権法第27条)、
⑾ 二次的著作物の利用権(著作権法第28条)
があります。
この著作権の方は「その全部又は一部を譲渡することができる」とされているように、他の者に譲り渡すことができます(著作権法第61条第1項)。
また、「二次的著作物」という言葉が出てきたので、簡単に二次的著作物について説明します。
「二次的著作物」とは、「著作物」を翻訳したり編曲したり変形したり脚色したり、映画化したりその他翻案することにより創作した著作物をいい、これも著作物にあたりますので、保護される対象になります(著作権法第2条第1項第11号)。
例えば、ある楽曲を編曲して別の曲調の曲を作ったり、小説や漫画を映画化したりする際に新しく生み出された曲や映画に発生するものです。
著作権侵害の事例
① 著作権等侵害罪
「著作権、出版権又は著作隣接権を侵害した」場合、著作権等侵害罪が成立し、10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金、又はその両方に処せられます(著作権法第119条第1項)。
この罪における「著作権、出版権又は著作隣接権を侵害した者」とは、著作権者の許諾を得ることなく著作物を複製したり、上演したり、上映したり、公衆送信したり、頒布したりするなど著作権の内容となるべき行為をした者や著作物の出版をした者、著作隣接権者の許諾を得ないでレコードを製作したりテレビ番組を放送したりした者が当たります。
なお、私的使用の目的でもって自ら著作物の複製等を行った者については、著作権法第119条第1項の「著作権、出版権又は著作隣接権を侵害した者」から除かれています(同項かっこ書参照)。
例えば、著作権者に無断で有名漫画の画像データをアクセス数やアフィリエイト報酬を稼ぐ目的で自分のブログ等にアップロードした場合は公衆送信権等を侵害したということになりますし、いわゆるディープフェイク動画を作成して公開した場合には公衆送信権や翻訳権、二次的著作物の利用権を侵害したということになります。
② 著作者人格権等侵害罪
次の者について、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金、又はその両方を科すとされています(著作権法第119条第2項)。
⑴ 著作者人格権又は実演家人格権を侵害した者(同条第1号)
⑵ 営利を目的として、第30条第1項第1号に規定する自動複製機器を著作権、出版権又は著作隣接権の侵害となる著作物又は実演等の複製に使用させた者(同条第2号)
⑶ 第113条第1項の規定により著作権、出版権又は著作隣接権を侵害する行為とみなされる行為を行った者(同条第3号)
⑷ 第113条第2項の規定により著作権を侵害する行為とみなされる行為を行った者(同条第4号)
この著作者人格権等侵害罪についても、両罰規定があり、⑴と⑵の場合は500万円の罰金が、⑶と⑷の場合は3億円以下の罰金が法人にも科せられます。
例えば、テレビ番組を編集して違法に複製したDVDをインターネットオークションで販売したとして⑶に当たるとされた場合があります。
③ 録音録画有償著作物等の違法ダウンロード
30条1項に定める私的使用の目的をもって、録音録画有償著作物等の著作権を侵害する自動公衆送信又は著作隣接権を侵害する送信可能化に係る自動公衆送信を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、自らそのような録音録画だと知りながら行って著作権又は著作隣接権を侵害した者等については、2年以下の懲役又は200万円以下の罰金に処し、又はその両方を科するとされています(著作権法第119条第3項)。
これらのほかに自動複製機器を提供した者が著作権等の侵害となる著作物又は実演等の複製に使用させた場合には500万円以下の罰金となりますし、技術的保護手段回避装置等の公衆譲渡等をした場合や技術的保護手段等の回避等を行った場合等には3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金又はその両方が科されることになります。この他にも著作権法にはいくつかの罰則が定められております。
商標権
商標権は、商標法によって保護されている権利で、登録商標を指定商品又は指定役務について排他的独占的に使用できる権利です。商標を保護すると、一定の商標を使用した商品又は役務は必ず一定の出所から提供されるということを保障し、取引において商品等の混同を防止することになります。
商標権とは
まず、商標とは、「人の知覚によって認識することができるもののうち、文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、音その他政令で定めるもの」であって、「業として商品を生産し、証明し、又は譲渡する者がその商品について使用するもの」か、「業として役務を提供し、又は証明する者がその役務について使用するもの」をいいます(商標法第2条第1項)。
簡単にいえば、事業を営む者が、自分の取り扱う商品やサービスを他の事業者の商品などと区別するために使用するマーク・しるしを「商標」といいます。
商標には、①出所表示機能、②性質保障機能、③広告宣伝機能があるとされます。
そして、この商標を特許庁に商標出願して、審査を経たのち、登録されることによって商標権が発生します。商標権は、設定の登録の日から10年間存続しますが、更新することができます(商標法第19条第1項第2項)。
著作権とは異なり、商標権の譲渡に制限はありません。
商標権者は、商標の使用をする商品又は役務を指定して、指定商品又は指定役務について登録商標の使用をする権利を専有することができますので、第三者による登録商標の類似範囲の使用を禁止することができます(商標法第25条)。
商標権侵害の事例
①商標権の直接侵害
「商標権又は専用使用権を侵害した」場合は、10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金、又はその両方が科せられます(商標法第78条)。
ここでいう商標権の侵害とは、商標を使用する権利・権限がまったくない者が、指定商品や指定役務について、商標登録をされている商標と同一の商標を使用した場合は、商標権の直接侵害行為となります。
例えば、海外の有名ブランドのバックを売った場合には、商標権の直接侵害行為となります。
②商標権の間接侵害
「商標権又は専用使用権を侵害する行為とみなされる行為を行った」場合については、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金、又はその両方が科せられます(商標法第78条の2)。
「商標権又は専用使用権を侵害する行為とみなされる行為」とは、商標法第37条や第67条に掲げられている行為に当たる場合をいいます(商標法第37条)。
例えば、指定商品や指定商品・指定商標と類似する商品を、登録商標又はこれに類似する商標を付けたものを譲渡したり輸出したりするために所持する行為や、指定商品等について登録商標やこれに類似する商標を使用したり使用させたりするために登録商標又はこれに類似する商標を表示する物を所持する行為は、「商標権又は専用使用権を侵害する行為とみなされる行為」に当たります。
③その他の罰則
上記に挙げるもののほか、商標登録等にあたって特許庁に所属する審査官等をだました場合や登録商標以外の商標の使用をする場合にその商標に商標登録表示又はこれと紛らわしい表示を付した場合は、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金になります(商標法第79条、第80条)。
著作権法違反や商標法違反の犯罪を起こしてしまったら
ここでは、著作権法違反や商標法違反を犯してしまったと気が付いたら、前科を避けるために、または処罰を軽くするためにどんな行動をとるべきか、説明します。
すぐに弁護士に相談する
最近では、動画や音楽のダウンロードやアップロードが簡単にできてしまうため、気軽にこれらの行為をしてしまい、気が付くと多数の著作権法違反を犯していることも少なくありません。当然のことですが、違反の数が多ければそれだけ多くの罪に当たったり、悪い情状になったりするため、重い処罰になりやすくなります。
著作権法違反等を犯してしまったことに気が付いたら、すぐに弁護士に相談することが重要です。
示談交渉をする
被害者は、著作権の侵害や商標権の侵害により利益を得る機会を損なったことや、著作物の価値が損なわれたという点で被害を受けています。
示談交渉では、こうした被害について、弁償することが重要ですが、著作権や商標権が会社に帰属している場合、弁償を拒まれるケースが多いです。
そのような場合でも、被害について弁償しようとした、という意思を示すことが重要なので、弁護士を介して示談を申し込み、その経緯を示談経過報告書としてまとめることが有用です。
身体開放活動に向けて活動する
著作権侵害や商標権侵害の被害の程度が大きい場合や組織的な犯行の場合、逃亡の可能性や事件関係者と口裏合わせをするという証拠隠滅をする可能性があるとして逮捕される可能性があります。逮捕された場合、長期間にわたって身体拘束を受ける可能性が高くなるため、仕事や学校に通えなくなってしまいます。
そこで、逃亡や証拠の隠滅などができない環境を作り、検察官や裁判所にそれらの事情を主張することで、早期の釈放を目指します。
事実関係を争う
現在の著作権法違反や商標法違反は、インターネットという仮想の空間を介したものが大多数を占めるため、自分の開発したソフトウェアを使い他人が著作権等を侵害する行為をしたために、予期せぬところで事件に巻き込まれてしまう可能性があります。
そのような場合には、事件に至る経緯等を積極的に明らかにし、事実関係を争う必要があります。
弁護士の力を借りて主張を固め、それに即した証拠を収集し、捜査・裁判に適切に対応していくことが求められます。
まとめ
先ほどまでご説明したとおり、著作権法違反や商標法違反の事件では、自分のどのような行為が犯罪になっているのかも分からずに、気が付かないうちに加害者になっている場合もあります。事件に至った経緯や事実関係を明らかにし、捜査や裁判に対応して行く必要があるので、必ず弁護士に相談・依頼するようにしましょう。
著作権法違反や商標法違反をはじめとした事件でお困りの場合は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。
知的財産権に関連した事件の経験豊富な弁護士が、直接「無料相談」を行います。
思いがけず事件の加害者になりお困りのご自身やご家族が、前科を避けられるよう全力でサポートしていきます。
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